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成長ホルモン注射の費用と新しい治療法


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成長ホルモン治療は効果が期待できるが

欧米の研究では、成長ホルモンの量を使用量を多くすると成長ホルモンの分泌に問題がない子供の場合だとしても身長の伸びを促進させることが明らかになってきました。

身長が伸びないことで悩んでいる親御さんや子供たちにとっては、この報告は成長ホルモン治療を考えることにつながるかもしれませんね。

しかし「低身長になる病気と原因」の記事の中でもご紹介しているのですが、子供の身長が低いからといって、ほとんどの場合、それは病気ではないんです。

つまり、身長が低い原因が何らかの病気でない限り、健康保険は使えません。

病気ではない場合での低身長(特発性低身長、家族性低身長)は低身長の人の約8割にもなるのですが、それらの人に対する成長ホルモン投薬治療は保険の対象外です。

保険を使うことができる病気の場合であったとしても、治療法については細かい規定があります。

そして、成長ホルモンの使用量を多くしたり、思春期の終わりを遅らせるための性腺抑制療法は健康保険の対象外です。

これから低身長の治療法を紹介します。

しかし、それらの方法はたくさんの低身長児に効果はあるとは思いますが、保険が効かないケースがほとんどなんです。

つまり、低身長を治療する場合には治療費がかなりかかってしまうと考えてください。

このポイントは最初におさえておいてくださいね。

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成長ホルモン治療の値段は?

低身長を治療する時にいちばん用いられる治療法が、成長ホルモンを使った治療方です。

しかし、成長ホルモンはななり高額なんです。

しかも、日本の成長ホルモンの値段は世界の値段と比較しても最高水準なのではないでしょうか。

成長ホルモンの値段は国ことに違います。

下の表はちょっと前の世界の成長ホルモンのmgあたりの値段なのですが、日本の成長ホルモンの値段が飛びぬけて高額なのがわかりますよね。

円/mg
イスラエル 2,709
台湾 4,121
イギリス 5,085
オーストラリア 5,109
カナダ 5,594
フランス 5,637
スウェーデン 5,947
オランダ 7,473
アメリカ 9,510
ドイツ 10,078
日本 15,141

とはいえ、この表の値段は以前のものです。

いまではmgあたりの値段はこの3分の2ぐらいの値段にまでなっているといいます。

しかし、他の国の成長ホルモンの値段も同じように下がっているというので、相変わらず日本の成長ホルモンの値段が世界一高いことは変わりないですね。

成長ホルモンは薬の種類によって値段に若干の違いがあるのですが、成長ホルモンは、1mgあたり約1万と考えていいと思います。

成長ホルモンの分泌量に問題がない場合の低身長を治療する時には、成長ホルモンの分泌量が足りない「成長ホルモン分泌不全性低身長症」で使われる量の1.5倍の0.25mg/kg/週を使うことになります。

なぜなら、成長ホルモンの分泌量に問題がなくて低身長の子供の場合は、成長ホルモン分泌不全の子供より成長ホルモン治療の効果が現れにくいことがわかっているからです。

そのため、成長ホルモンの使用量を多くする必要があるんです。

例をあげると、体重20㎏の子供の場合は、週に5mg、4週で20mgの成長ホルモンを使うことになります。つまり、月に20万円の成長ホルモン代がかかることになります。体重×1万円の薬代が一か月にかかると思っていいと思います。体重が30㎏なら月30万円、40kgなら月40万円もかかってしまうんです!

このように、成長ホルモンの値段はとても高額です。

日本での成長ホルモン治療が広まらない原因が、この値段の高さではないでしょうか。

成長ホルモン治療の適応を拡大してしまうと医療費が大幅に増えることになるので、厚労省は「低身長は病気ではない」という姿勢を貫いています。

日本では、病気ではない低身長の治療には高額の治療費が必要なのです。

ポイント

病気でないケースの低身長の人(特発性低身長、家族性低身長)は低身長全体の約8割を占めています。

病気でない体質性低身長の場合であっても成長ホルモンを使った治療の効果があることがわかつているのですが、健康保険の適用外になるので治療費は自己負担になります。

成長ホルモンの値段は、日本が世界で最も高い水準です。子供の体重1kg当たり月1万円かかると思っていいでしょう。

特発性の低身長 海外での成長ホルモン治療

多くの成長ホルモン治療の適応は、海外で認められてから日本で治験が行われ、海外に数年から10年ぐらいも遅れてやっと日本で承認されるという状況です。

たとえば、SGA性低身長症に対する成長ホルモン治療は、アメリカでは2001年、ヨーロッパでは2003年に承認されましたが、日本では2008年にやっと承認されました。

唯一の例外が、軟骨無形成症・軟骨低形成症に対する成長ホルモン治療で、海外においてはこの病気に対する成長ホルモンの適応はありません。

ホルモン異常ではなく、染色体や骨の異常もない、病気ではない低身長を体質性低身長といい、低身長の約80%を占めます。その中には、遺伝が関与していると考えられる家族性低身長
が約20%で、残りの約60%は特発性低身長と呼ばれます。特発性とは、原囚がわからないとい
う意味です。

アメリカでは、成長ホルモンの分泌が正常な特発性低身長症に対する成長ホルモン治療が認められています。その治験は1988年から2001年にかけて、成長ホルモン分泌が正常な低身長児の1群に0.22mg/kg/週(日本の成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療量の約1.3倍)を注射し、もう1群にプラセーボ(偽薬)を注射して、成人身長まで追跡しました。

最終的に成人身長SDスコアは、プラセーボを投与した群は平均マイナス2.3SD、成長ホルモンを投与した群はマイナス1.8SDで、その差は身長に換算すると、3.7cmの差でした。

補充量成長ホルモン治療では、特発性低身長の成人身長は改善しない

日本では、特発性低身長症に対する治療は、短期の臨床試験がひとつだけあり、短期的には成長の改善が認められました。

長期的なデータはありませんが、軽症成長ホルモン分泌不全性低身長症の患者に対して行われた成長ホルモン治療の効果を調べたデータがあります。

前述したように、軽症成長ホルモン分泌不全性低身長症は、病気ではない体質性低身長です。成長ホルモン治療を補充する治療法を行った後の成人身長を調べましたが、有意な改善は認められませんでした。

我が国では、3つ以上の成長ホルモン分泌刺激試験の結果、正常反応がひとつあっても、2つの低下反応があれば、「軽症成長ホルモン分泌不全性低身長症」として成長ホルモン治療の対象になっています。しかし、欧米ではひとつでも正常反応があった場合には、成長ホルモン
分泌不全性低身長症ではなく特発性低身長と診断されています。

我が国では、低身長で悩むこどもたちに成長ホルモン治療の機会を少しでも多く与えようということで治療対象になったのだと思いますが、この診断基準は「成長ホルモン分泌不全性低身長症」の学問的な定義とは異なります。

そのため医学的な解析をする時には、軽症成長ホルモン分泌不全性低身長症は、成長ホルモン分泌が正常のこどもとして扱われます。

アメリカでは効果があった成長ホルモン治療が日本で効果がなかったのはなぜ?

アメリカでは効果があった成長ホルモン治療が、なぜ日本では効果がなかったのでしょうか。

違いは、成長ホルモンの治療量にあります。日本は0.175mg/kg/週の治療量ですが、この治療量はこどもが1日に分泌する量と同等か少し多めです。しかし、この量の成長ホルモンでも、成長ホルモンを分泌している下垂体に分泌を抑制する力(ネガティブ・フィードバッ
ク)がかかり、成長ホルモンの分泌は抑えられてしまいます。

成長ホルモンを投与しても単純に分泌量が上乗せされるわけではなく、治療効果は健常なこどものホルモン分泌量を少し超えた量の成長ホルモンのみとなります。短期的には成長が促進されますが、十分な改善ではありません。

また成長ホルモンは性腺(精巣や卵巣)の働きを高めるため、思春期が少し早く来ると考えられます。

「身長が伸びる時期と止まる時期」でも説明しましたが、思春期のスタート時期が早まると、低い身長で思春期に入ることになり、思春期の伸びはほぽ一定のため、成長ホルモン治療で改善した初期の身長の伸びも相殺されます。

したがって、成長ホルモンの分泌が正常と考えられる低身長のこどもに、成長ホルモン分泌不全性低身長の補充量治療(0.175mg/kg/週)を行っても、最終的には成人身長の改善はさほど認められません。

高額の費用をかけても、最終的な身長が変わらないのであれば、わざわざ成長ホルモン補充治療を行う必要がないと思われるかもしれません。しかし成人身長が改善されないとしても、前思春期に少しでも低身長が改善することにより、学校生活などにおける生活の質は改善すると考えられます。

実際には、専門医が治療量をうまくコントロールし、思春期に性腺抑制療法やタンパク同化ホルモンなどの治療の工夫をすれば、思春期の伸びが大きくなり、成人身長も改善すると考えられています。

病気ではない特発性低身長に対して行う補充量の成長ホルモン治療は、ある程度の効果があるものの、身長を伸ばす効果は限定的というのが、正確な評価といえるかもしれません。

ポイント

特発性低身長の治療において、成長ホルモンの投与量が成長ホルモン分泌不全性低身長症に認められている用量程度であれば身長を伸ばす効果は限定的となります。

高用量成長ホルモン治療で成人身長は改善する

成長ホルモンを補充する治療法では成人身長はほとんど変わらない、という結果に落胆された方もあるかもしれません。しかし最新の臨床研究で、通常より高用量の成長ホルモンを投与すれば身長が伸びることがわかっています。

特発性低身長に0.22mg/kg/週の成長ホルモン治療により、成人身長が改善するとすでに述べましたが、アメリカでは、特発性低身長症に対する用量反応試験が行われており、どの程度投与量を増やせば効果があがるのかがわかっています。

0.37mg/kg/週(日本の治療量の約倍量)の高用量成長ホルモン治療を行えば、かなり身長が伸びるというデータも出ています。

治療前の平均身長SDスコアがマイナス2.8SDたったこどもたちが、高用量の成長ホルモンを投与することで、成人身長SDスコアの平均がマイナス1.0SDまで改善され、94%が正常成人身長(マイナス2SDを超えた)になりました。

前述のプラセーボ(偽薬)を投与した群との身長差は7.3cmでした。このことは、成長ホルモンの分泌が正常の低身長でも、高用量成長ホルモン治療をすると、成人身長が改善することを示しています。

高用量治療では成長率の改善度が大きいので、思春期がやや早まるなどのマイナスの影響を、効果が上回るのです。

これらの臨床試験の結果、アメリカでは身長SDスコアがマイナス2.25SD以下の突発性低身長症に対して、成長ホルモン治療が適応になっています。ただし、成長ホルモンの価格が日本に比べて安いといっても、高用量なので経済的な問題もあり、アメリカの保険会社はすぐには認めないという話も聞いています。

乳幼児低身長児、および前思春期低身長で標準成長曲線にそって成長している、ホルモン分泌に異常がないこどもに対する身長促進法としては、この成長ホルモンの高用量治療しかないと考えられますが、わが国では保険が適用されません。

ポイント

欧米の研究で、日本の治療量の1.3~2.7倍の高用量成長ホルモン治療を行えば、身長をある程度伸ばせることがわかっています。しかし高用量成長ホルモン治療は健康保険の適用対象外となります。

予測成人身長と低身長思春期発来

「身長を伸ばすサプリや薬はあるのか?」で骨端線の説明をしましたが、こどもの低身長を考えるうえで、成長ホルモンとならんで重要な役割を果たしているのが性ホルモンです。

性ホルモンは、思春期の前半に急激な成長を促しますが、後半には骨年齢を進め、骨端線を融合させて骨を大人の骨にして、成人身長を決める働きがあります。

現在、この性ホルモンの分泌を制御することで、身長を伸ばす治療法の研究が進められています。

具体的な治療法の解説に入る前に、ホルモン治療の効果を判定するうえで必要な「予測成人身長」と思春期と低身長の関係について、解説しておきます。

成人身長の予測

低身長児に対する治療の効果を評価するためには、無治療で成長したときにどのくらいの成人身長になるのかを予測する「予測成人身長」と、実際に治療したときの成人身長を比較することが必要です。

成人身長を予測する方法はいくつもあります。日本では、TW2(Tanner-Whitehouse2)法、Baily-Pinneau法という、それぞれ英米の有名な予測方法がよく使われているようです。しかしこれらの方法は、正常なこどもの成長データを多数解析して作られたので、低身長のこどもにあてはめると成人身長を高く評価してしまう傾向があります。

また、成人身長を前思春期に評価しても、思春期の時期が早いか遅いかによって成人身長は変わります(「身長が伸びる時期と止まる時期」参照)。

前思春期におよその成人身長を予測するには、成長曲線を用いて前思春期の身長を、そのまま標準成長曲線にそって成人身長まで伸ばしてみるのが、一番簡単な方法です(下図参照、Ⓑ)。

思春期が早かった場合にはそれより低くなり(上図の©)、思春期が遅かった場合にはそれより高くなります(上図のⒶ)。低身長のこどもは思春期が遅い傾向があるので、約60%はⒶのように身長SDスコアが改善しますが、秋田県の疫学研究ではその改善度は平均0.7SDで、平均身長まで達した人はいませんでした。

思春期にはいると、低身長のこどものデータの解析によって作ったGrowth Potential Ⅱ法を
用いると、成人身長の予測は正確度を増します。

思春期開始時の年齢、身長、体重、骨年齢を用いて、思春期の伸びを2~3cm以内の誤差で予測できます。思春期開始後1~2年以内でも予測可能です。したがって、治療した後の思春期の伸びと、思春期開始時に予測した思春期の伸びを比較することによって、治療効果がわかるわけです。

成人低身長となるメカニズム「低身長思春期発来」

「身長が伸びる時期と止まる時期」で、低身長のこどもの成人身長と一番強く相関する臨床因子は、思春期開始時の身長であることをお話ししました。

男子の場合135cm未満で思春期にはいると、16.7%しか160cm以上の成人身長に達せず、女子の場合132.5cm未満で思春期にはいると、17.2%しか150cm以上の成人身長に達しまん。

すなわち成人身長が低くなることの一番大きな原因は、低身長で思春期にはいることです。

これを「低身長思春期発来」と呼んでいます。

ポイント
  • 低身長児に対する治療の効果を評価するためには、無治療で成長したときにどのくらいの成人身長になるのかを予測する「予測成人身長」と、実際に治療したときの成人身長を比較することが必要になります
  • 低身長のまま思春期に入ってしまうと、成人身長が低身長で終わる可能性が高くなります。これを「低身長思春期発来」といいます。

 

思春期の伸びを大きくするための治療法

低身長で思春期に入ってしまったこどもの成人身長を高くするためには、思春期の伸びを大きくすることが必要です。ここではその治療法を紹介します。

タンパク同化ホルモン療法

男子においては、タンパク同化ホルモンの単独治療を行う場合があります。特に低身長を伴った思春期遅発症や思春期に入っても成長率があがらない例に有効です。

プリモボラン(商品名)というタンパク同化ホルモンは、男性ホルモンの作用を持っていますが、女性ホルモンに代謝されないので、骨年齢を進める作用が少ないのが特徴です。したがって、男子に対する作用としては成長促進、筋肉増強、陰茎増大、陰毛、ニキビ、声変わりなど、思春期の二次性徴が促進されます。

また下垂体の性腺刺激ホルモンの分泌を抑制するので、性腺刺激ホルモン(LH、FSH)と同時に男性ホルモン(テストステロン)も低下し、骨年齢の進行が少し遅くなることも、成人身長の改善には有効です。男性ホルモンが低下してもタンパク同化ホルモン自身の成長促進作用のために、成長率はあがります。

ただいったん治療を始めると、途中でやめた場合に成長率の低下が起こるので、成長率をみながら治療量を増量して長期に治療する必要があります。

副作用としては、タンパク同化ホルモンの量を増やすと肝機能が悪くなる(肝臓の酵素であるAST、ALTが軽度上昇する)男子が1~2%みられますが、症状はありませんので、3ヵ月毎に検査をしながら治療をしていきます。

肝機能障害が起こったときは、薬を減らすか止めると正常化します。そのため、3ヵ月毎に肝機能や性腺刺激ホルモン・性ホルモンの抑制状態、骨年齢の進行状態をみながら、治療を進めていくことになります。

この治療による成績はまだあまり出ていませんが、Growth Potential Ⅱ法を用いて思春期開始時の予測成人身長と比較すると、平均2~3cmの改善をみています。

性腺抑制療法

性ホルモンを抑制して骨年齢の進行を抑えるために使われるのは、LHRHアナログ(商品
名:リュープリン)という思春期早発症のために開発された注射薬です。

思春期のホルモンとLHRHアナログの働きを下の図に示しました。

思春期になると、脳の視床下部からLHRH(黄体化ホルモン放出ホルモン)が周期的に分泌されます。LHRHは、成長ホルモンなどさまざまなホルモンを分泌している下垂体に働いて、LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)という性腺刺激ホルモンの分泌を促進します。

そして血液中に分泌された性腺刺激ホルモンは性腺に働いて、男子では男性ホルモン(テストステロン)、女子では女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を促します。その結果、二次性徴が成熟し、思春期の前半は成長が促進します。

リュープリンは、性腺刺激ホルモンの働きを特異的に抑制するので、その結果、男子においては男性ホルモン、女子においては女性ホルモンの分泌を抑制します。長時間効果が続く徐放性の注射薬ですので、月1回の注射で効果が持続しますが、自己注射は認められていませんので、月1回は通院の必要があります。

リュープリンは、わが国では1992年に認可され、中枢性思春期早発症以外に子宮内膜症、子宮筋腫、前立腺癌、閉経前乳癌などにも適応が認可されています。

副作用としては、肝機能障害、アナフィラキシー様症状(過敏性のアレルギー反応の一種)などが0.1%未満の頻度で報告されています。

治療終了後に、全例で思春期の回復・成熟を見ています。男子は治療終了後半年で、リュープリンで抑えられていたテストステロン(男性ホルモン)が成人レベルまで上昇します。女子
は、治療終了してから月経が始まるまで1~2年かかります。

懸念されるのは、性ホルモンを抑制するために、この時期に骨密度が停滞することですが、すでに思春期に入ったことである程度骨密度が上昇しているのと、後で述べる併用療法で、実際には骨密度の過度の低下は起こっていません。

リュープリンは、性腺刺激ホルモンを特異的に抑制し、その結果、性ホルモンの分泌を抑制する働きがありますが、1回目の注射は、性腺刺激ホルモンを刺激することがわかっています。したがって、骨年齢が進行する場合もあります。特に、思春期がある程度進行している女子の場合には、月経が起こる場合もありますので、そのことを事前に話しておくことも必要です。

ポイント

身長の伸びを大きくする方法としては、成長促進の効果が望める「タンパク同化ホルモン療法」と、性ホルモンを抑制して骨年齢の進行を抑える「性腺抑制療法」があります。

性腺抑制療法と成長促進療法の併用

低身長で思春期に入った小児に対する治療法は、思春期の身長の伸びを最大限にすることが主眼となります。すでに述べましたが、背が止まるメカニズムは、骨の骨端線が閉鎖することにより骨が大人の骨になるからです。

骨端線を閉鎖するホルモンは、性ホルモンの働きであることがわかっています。したがって、性ホルモンの分泌をおさえることができれば、骨年齢の進行が抑制されて、大人の骨になるまでの時間が長くなります。すなわち、思春期が終わる時期を先延ばしすることで、思春期の伸びを大きくすることが、治療の基本になります。

難しいのは、性ホルモンには、思春期に身長を伸ばす作用もあるため、単純に性ホルモンの分泌をおさえると成長率が落ちてしまう点です。性ホルモンの分泌を抑制することで大人の骨になるまでの時間を延ばしても、その間の成長率が落ちてしまったのでは、最終的に成人身長を高くすることは困難になります。

思春期の伸びを大きくするためには、性腺抑制療法と同時に成長を促進するホルモンを加える必要があります。そのためには次の方法が考えられます。

①性腺抑制療法(リュープリン)+ 成長ホルモン

 

②性腺抑制療法(リュープリン)+ タンパク同化ホルモン(プリモボラン)

また、治療開始の年齢、身長にもよりますが、多くの症例は女子2年以上、男子3年以上の長期治療が必要です。

成長ホルモンと性腺抑制療法の併用治療

成長ホルモン治療と性腺抑制療法の併用でどの程度身長が伸びるのか、具体的なデータを見てみましょう。

性腺抑制療法を併用したのは、成長ホルモン治療している軽症と中等症の成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断されたこどものうち、135cm未満で思春期に入った40人の男子と132.5cm未満で思春期に大った14人の女子です。

これらの低身長思春期発来小児に対して、性腺刺激ホルモンの分泌を抑制するリュープリン治療を、男子平均4.3年、女子平均4.0年併用しました。

治療成績を、低身長思春期発来の成長ホルモン分泌不全性低身長症で、併用療法を行わなかった症例と比較すると、その効果ははっきりと現れました。

下の表に示すように、成長ホルモンだけの治療では、平均成人身長が男子で159.4cm、女子で146.7cmであるのに対し、リュープリン併用療法による平均成人身長はそれぞれ163.0cm、151.3cmと有意に高くなりました。

思春期の伸びの平均も、成長ホルモン治療だけの男子27.4cm、女子19.6cmに対し、リュープリン併用療法はそれぞれ33.8cm、25.8cmと有意に大きくなっています。

成人身長が男子160cm、女子が150cmを超えた割合は、併用療法ではそれぞれ80%(32/40人)、71%(10/14人)で、成長ホルモン治療だけの36%(5/14人)、10%(2/21人)より有意に改善しました。

副作用はほとんどありませんが、長期の治療が必要で、その間に思春期が成熟しないことの心理社会的問題、骨密度が上昇しない可能性などをよく説明し、納得していただいたうえで治療を開始する必要があります。

性腺抑制療法とタンパク同化ホルモン(プリモボラン)併用療法

性腺抑制療法と成長ホルモン治療のほうが、タンパク同化ホルモン単独療法より治療効果は大きいのですが、成長ホルモンの適応は限られますし、自費で行うには費用が高額です。

次善の治療法として、性腺抑制療法とタンパク同化ホルモンの併用療法があります。

タンパク同化ホルモンは女子に対しても成長促進作用がありますが、もともと男性ホルモン作用を持っているので、一日量が少量(半錠~I錠)しか使えません。

少量でも、声変わりや毛深くなる女子が出てくるので、そのような副作用があっても身長を高くしたいという人しか治療をすすめません。

性腺抑制療法とタンパク同化ホルモン併用療法の例

低身長思春期発来の男子で、無治療で成人身長まで経過観察した例と、性腺抑制療法とタンパク同化ホルモンの併用療法を受けた例を示します。

下の図は、低身長思春期発来の男子で、無治療で成人身長に達した例です。

3歳ごろよりマイナス1~マイナス2SDの間の成長を示していました。11歳6ヵ月に精巣容量が4mlとなり、思春期に入りました。その時の身長132cm、体重29kgで、骨年齢は10歳したので、Growth Potential Ⅱ法による予測成人身長は、159.1cmでした。

成長率は13歳時に9.8cm/年まで上昇しましたがその後低下し、思春期開始時から成人身長までの4年間の伸び28.5cmは、予測より大きく15歳6ヵ月に成人身長160.5cmに達しました。

思春期開始年齢が遅れなかったので、成人身長SDスコアも前思春期のマイナス1.8SDとほぽ同じでした。この症例の成長率は、図の下段に示すように標準の成長率曲線にそっており、思春期は4年間でした。

下の図は、同様に低身長で思春期に入って、性腺抑制療法とタンパク同化ホルモンの併用療法を受けた症例です。

12歳4ヵ月に131.2cmで思春期に入り、成長率は急速に上昇し10cm/年を超えました。12歳11力月で身長137cm、体重33.3㎏、骨年齢11.8歳でしたので、この時点でのGrowth Potential Ⅱ法による予測成人身長は、157.8cmでした。

13歳よりリュープリンによる注射を始め、成長率が落ちてきた14歳2ヵ月からプリモボランの内服を始めました。低下していた成長率は改善して8cm/年まで上昇し、その後は徐々に低下していきました。

159.8cmに達した16歳7ヵ月で治療を終了しましたが、18歳では成長率1cm/年になるまで伸び続け、18歳3ヵ月に164.7cmになりました。思春期が始まってからの期間は5年11ヵ月になります。

リュープリン注射で性ホルモンを抑制することにより、骨年齢が約2年に1歳の進行となります。成長率を保つためにタンパク同化ホルモンを投与しますが、それでも骨年齢14歳ごろで成長率がかなり落ちてくるために治療を終了しました。

男子の場合は治療終了後も約5cm前後は伸びますが、女子は治療終了してから成人身長までの伸びは、2~3cmぐらいしか期待できません。

性腺抑制療法とタンパク同化ホルモンの併用療法の結果

それでは、性腺抑制療法とタンパク同化ホルモン併用療法で、どの程度身長が伸びるのでしょうか。男女別に最新の研究データを紹介します(下表参照)。

135cm未満で思春期に入った男子で、30人は無治療、21人はリュープリンとタンパク同化ホルモンの併用療法を行いました。

思春期の伸びの平均は、無治療26.4cm、併用療法33.9cmで、成人身長の平均は、無治療156.9cm、併用療法164.3cmでした。

成人身長が160m以上になった割合は、無治療16.7%(5/30人)にたいし、併用療法では90.5%(19/21人)でした。

132.5cm未満で思春期に入った女子で、29人は無治療、16人はリュープリンとプリモボラン併用治療を受けました。

思春期の伸びの平均は、無治療19.5cm、併用療法25.4mで、成人身長の平均は、無治療145.7cm、併用療法149.7cmでした。

成人身長が150cm以上になった割合は、無治療17.2%(5/29人)にたいし、併用療法では43.8%(7/16人)でした。

女子のほうが治療効果が少ないのは、性腺抑制をしたときに、成長率の低下が男子より大きいため、およびタンパク同化ホルモンを十分量使えないためです。女子の身長を伸ばすのが困難であることがおわかりいただけると思います。

さらに、女子の治療目標身長150cmは、成人の身長SDスコアで計算するとマイナス1.57SDにあたり、男子の治療目標身長160cmが身長SDスコアでマイナス1.86SDであるのに比べて、ハードルが高いことも事実です。

性腺抑制療法とタンパク同化ホルモンまたは成長ホルモンとの併用療法のどちらを選ぶか

性腺抑制療法と成長ホルモンの併用治療では、二次性徴が停止し身体的・精神的な成熟が進まないために心理社会的問題がおこることがあります。

その点、性腺抑制療法とタンパク同化ホルモン併用療法は、男子にとっては、タンパク同化ホルモンの作用により二次性徴が促進していくので、思春期遅発に伴う心理社会的問題が少ないと考えられます。

また、性腺抑制療法と成長ホルモン治療は、性ホルモン低下によって、この時期の性ホルモンの骨を強くする作用が働かないため、骨がもろくなる可能性がありました。

しかしタンパク同化ホルモン、プリモボランは、もともと骨粗鬆症に適応する薬ですので、骨密度の上昇も認められています。しかし、女子では声が低くなる可能性があります。

以上説明したとおり、身長を伸ばす治療法の臨床研究は世界中で行われており、科学的な証拠にもとづく効果的な治療法が開発されつつあります。

ただし、こうした最新の治療法をもってしても、成人身長が10cm以上改善されるような夢の治療法はありません。成功したどの治療法でも、成人身長の改善は平均5cm前後で、治療期間も3年以上かかります。

また、ここに述べた治療法は、保険診療が適用されません。自費診療だと、成長ホルモン治療は月当たり体重x1万円かかることをお話ししましたが、性腺抑制療法は治療量によりますが、月に4万~8万円かかります。

タンパク同化ホルモンは安価な薬なので、月2000~3000円ぐらいです。

最近では、性腺抑制療法+タンパク同化ホルモン療法+成長ホルモン療法の3つを併用し、大きな治療効果を見た症例を経験していますが、データはまだ多くありません。

このような結果を見てもわかるように、成人身長を高くするのはとても難しいのです。

ポイント

思春期の伸びを大きくするためには、性腺抑制療法と同時に成長を促進するホルモンを加える必要があります。具体的には以下の方法です。

①性腺抑制療法(リュープリン)+成長ホルモン

②性腺抑制療法(リュープリン)+タンパク同化ホルモン(プリモボラン)

それぞれの治療法は副作用と効果、費用が異なります。

 

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